季節の便り:10

北のクラフトフェア MORIOKA 2025 編

昨年の北クラを見て帰りの新幹線の中「来年も来よう!」と決めた、心に残る良質のイベント。
前日に入った盛岡の街は季節柄様々なイベントがあちこちで開催されている中、静かに日常が流れ明日のイベントに5万人の人が集まるとは思えない「今日は今日」と言う空気に包まれていました。盛岡は懐が広い。
今年も会場の盛岡城址公園を早朝に散歩し、効率よく見て回れるようイメージしながら行ったり来たり、そわそわ。
昨年の7割ぐらいがリピート、3割程度が新規出展者のように感じました。ここだけで一日充分に楽しめるボリューです。

【伊藤嘉輝(星耕硝子 秋田県)】
吹きガラスの手触り、柔らかさ、安心感と扱いやすさがある厚み。ひとつひとつが微妙に異なり、人の手で作られた感触が伝わります。
別な出展ブースでは設営にも進化、個性が見られ、手作りの小さなスペースに繊細なグラスが並びます。(右端)

【伊藤あゆみ (木こり屋 いろどり経木 岩手県)】
古くて新しいプラスチックに代わる包装材『経木』から、自然と調和した暮らしづくりを目指して。(Instagram より)
後継者が課題の森林産業にも、こんな新しく新規性あふれる可能性が生まれました。こういった取り組みはとても好感を持ちます。福島県南会津も山深い地域で美しく商品化された経木は驚きでしたが、きこり屋では、様々な種類の経木をザクっと混ぜた計り売りをしていました。また、柔らかな質感を生かしたオブジェはソフトな寄せ木細工のように色の違う木が織りなす偶然のデザインが素敵です。種類別に棚に整理したり、乾燥のため天井に下げた風景も「いろどり経木」そのもの。美しいのです。経木づくりを始めたばかりとのことですが、未知数の活かし方があるなか、大きな可能性を感じました。もっと取材したい取り組みです。

【桜井こけし (櫻井尚道 宮城県)】
北クラ初参加。池エリアの隅にひっそりと佇み、櫻井家六代目はこけし達の後ろで存在を消していましたが洗練された美しいデザイン、北クラ一番の衝撃でした。宮城県鳴子こけしは全国的にも有名ですが伝統工芸こそ伝統と革新が悩ましい中、櫻井こけしの先人達は新しい技術を柔軟に取り入れ、多彩なこけしを生み出してきました。作品に驚きたくさんの人が立ち寄り完売されたそうですが納得です。
全国で「ひいな展」を開催しているとDMをいただき、ホームページを見ましたが商品は完売です。北クラ発参加も満を持してのことで、すでに国内企業との取引やオリジナル商品(OEM)、企業やアーティストとのコラボレーション、オーダーメイドなど順調に見えます。一過性ではない新しいメイド・イン・ジャパンを見られたことに感激です。

【久米敬子 (未来 滋賀県)】
驚きは続きました。多種多様な羊毛の美しさを生かそうと、手つむぎ、手編みで物作りに取り組むニットブランド「未未(みび)」を滋賀県彦根市で始められた。趣味から興味を持ち、関心を深め、学び、起業しブランドを立ち上げる。自然で自由に感性が反応し、私たちに素敵な恵みをもたらしてくれました。日常から数多く持つものではないからこそ上質なものを持ちたい。

【下澤 海(工人船工房 長野県)】
竹製品は丈夫な上にデザインが素敵。誰もが欲しいのです。食品や食器、衣類や細々したモノ、全てを木や竹の入れ物に収められたら幸せなのです。蕎麦も竹ざるに盛り付けて食べたら美味しいのです。自然素材で人の手により作られたものはとて貴重ゆえ日常の中で取り入れたいと憧れます。

【後藤洋司(後藤製籠舎 大分県)】
何とかして少しずつでも上質の良品と暮らしたい憧れ。豊かな暮しとは何か?教えてくれる製品達に出会えた喜び。北クラは出会いの入口であって、ここからつくり手とその背景を知って行く旅が始まる。

【FUJITAMIHO(秋田県)】
独特で不思議な世界観に出会い、驚きは続きました。「庭で育てた草花や、森で採集した草木で糸を染めかぎ針編みの装身具や造形作品を制作しています。」(fujitamiho Instagram より)
つくり手を職人と呼べば良いのか、クリエイターなのか、デザイナーなのか?境界線はなく言えることはまず研ぎ澄まされた感性に技術が融合している。そして自由に表現している。しかし何か特別なのではなく育った環境や人との関わり、日々の暮しと豊かな視点の中で生まれている。

【かわたまき(兵庫県)】
drawing / knitting / sewing / embroidery / collage
特殊な編み方でアクセサリーを作られている。この方のInstagramに「スウェーデンに来て作ることがもっと好きになりました。自分のことももっと好きになりました。これからもまっすぐな心と大きな声で夢を語れる大人になりたいと思います。また一歩ずつ、ひとつずつ、積み上げていきます。」とありました。
とても心が洗われたのです。


【FOORO(栃木県)】(写真:中央)
草花・土・糸などが入った手漉き和紙で封筒などの生活雑貨やランプシェードなど、あたたかな商品が目に留まりました。

北のクラフトフェア MORIOKA 2025】
クラフトDAY
10.11[SAT] 10:00~16:00
10.12[SUN] 09:00~16:00
会場:岩手公園(盛岡城跡公園)芝生広場

今回は、12日13:00から岩手県公会堂で開催されたトークセッションにも参加して来ました。パネリストは北クラ選考委員の皆様。「北クラの歩き方」をテーマに、気になった作品や作家さん、見どころ、おすすめについて語られました。
北クラは作家さんの日々の時間をカタチにした発表の場、作家さんの声を聞くと言う日常では得難い経験、双方向の体験、消費ではなく生活とのつながり、作家さん同士や訪問者との出会いや再会、時間の共有、つながりや交流での新しいモノづくり・・・と、じんわり胸打つセッションで「人との交流による多幸感」と言う言葉が全てだと感じました。
前日に一通り見ての参加で振り返りとなるかと思いましたが、トークをお聞きして新たな発見や見方があると知り二日目の会場へ再度向かいました。
「北のクラフトフェア」とは、市民有志が企画・運営を行い、市の協力を得ながら2020年に第一回を開催したイベントです。50,000人の来場を迎えるその理由は、盛岡に来て実感できると思います。

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