デザインの考察:12

生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った(東京ステーションギャラリー)

作家の感性に直接触れたい、感性の源泉を知りたい。その一心で展覧会へ出かけました。デザイナーとしての視点で、と焦るように前のめりでしたが、やはり観始めると心穏やかな無心の境地になりました。
観覧者の約9割は女性でした。ハンドメイド市場が個人起業へ押し上げるまで成熟し精度も上がる日本で、そのアイディアやテクニックへ視点を向ける人や、手作りを尊重し心豊かな暮らしをする人、純粋で高いデザイン性に注目する人など視点は様々なのでしょう。
苦労してやっと手元に届いた図録を眺め展覧会を振り返りました。プロローグの文章には時代背景や美術の専門性からの分析などで作家や作品を紹介されていましたが心には響かず、続いて豊田市美術館学芸員 成瀬氏による「宮脇綾子の生きた道」を読むとそこには求めていた答えが散りばめられ、やはり「感性」とはその人が生まれ持ったものと育った環境、生き方が織りなすもので、努力や技術とは別なものだと感じました。作為なく純粋な感性のままやっていることに出会うべき人と出会い、飛躍すべくコトと出会う。

図録はバイブル。そして下絵やスケッチ画も大切な観点。大作が生まれる原点は何も仰々しいことはなく、暮しの中での何気ない眼差し、無垢な好奇心の賜物であろうと思うのです。
巻末のご縁ある方の寄稿文の中に「そもそも素晴らしい作品とはそれだけで力を放つ。知識や余計な説明などいらない。」とありました。全く同感です。

今回の展覧会で、豊田市美術館(愛知県)は特別協力となっており、やはり宮脇晴・綾子夫妻の地元ということで所蔵品が多いのかと思いました。東京だけではなく地域の美術館で良い展覧会が開かれており、気持ちがそわそわするばかりです。

ずっと気になっていたこと。作品の落款、サインともいうべき「あ」の存在。ここに大きな関心がありました。「あ」について毎回素材や色、配置、模様のトリミングまで強い拘りがありながらも、さらっと置いてあるのです。作家にとって「あ」の存在も作品をまとめる上で大事であったでしょう。
NHK Eテレ放送の「デザインあ」の「あ」をモチーフとしたデザイン展開は、宮脇綾子に着眼したのではないかと想像します。番組構成の原点さえもそうではないでしょうか。

東京ステーションギャラリー
豊田市美術館

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